おぼえがき
生揚(その一)
2018-08-04
協業工場では複数の生揚を生産しています。
それぞれの名称は原材料に起因したもので、時代の要請とともに多種化してきました。
創業以来主力の「濃口」は国内製造の醸造用脱脂加工大豆と北米小麦から造られます。連続蒸煮管でそのまま蒸し上げられる効率の良さと搾りの段階で油が出ないため大量生産に適しており高度成長とともに消費量も一気に拡大しました。
装置産業である醤油工場では味の差別化ができにくいという難点を潜在的に抱えていると言えます。伝統産業でもあり完成度が極めて高いことも挙げられます。
「大野醤油」であるためには何が必要か。
最終製品は組合員企業の火入れ調合に関わる部分ではありますが総じて甘口に仕上げられますので糖類をはじめとする調合物の長所特徴を活かせることが求められます。
発酵醸造の過程に一工夫が必要ですね。
製造方法
2018-08-04
醤油と一口に言ってもその製造方法によって大きく味の違いが現れます。
一、本醸造 本来の製造方法で生産量の八割を占めています。JAS規格で特級以上のものがこれに当てはまりますが醸造方法は多岐にわたります。多数派は大豆あるいは脱脂加工大豆と小麦を用いる「こいくちしょうゆ」と「うすくちしょうゆ」です。そのほかは大豆主体の「たまりしょうゆ」、小麦主体の「しろしょうゆ」があります。うまみを増すために醤油で醤油を仕込む「さいしこみしょうゆ」という特殊な方法もあります。
二、混合醸造 原料不足の時代に醤油諸味にアミノ酸液を発酵槽で混合して一緒に醸造する方法で当時は新式醸造と呼ばれていました。
現在ではほとんど見られません。
三、混合 火入れの段階で本醸造生揚とアミノ酸液を混合します。うまみを強調でき薄色に仕上げることも容易です。
一麹・二櫂・三火入れ(その五)
2018-07-30
生揚醤油はローリー車で組合員企業に運ばれ調合・火入れされて最終製品となります。協業工場の役割は基本的にこの出荷までです。ただ一般的ではない製品については200リットルの二重窯で少量生産しています。
火入れの行程は熱殺菌の意味が第一ですが甘みを加えたり塩分を調整したりと組合員それぞれの個性が発揮されますので顧客の好みに応じて多種多様な広がりが見られます。
協業工場の設立が基本的品質の向上に大いに貢献した結果、火入れにおける味づくりがより一層問われるようになりました。
かつて酒ビール・米・醤油といえば代表的な宅配商品でした。中でも醤油は製造元直売の慣習が残る貴重な存在だったと言えます。大野醤油はたくさんの「大野の醤油屋さん」が、大げさに言うと各家庭の味を守る役割を担ってきたわけです。
終わりよければすべてよし一麹・二櫂・三火入れ(その四)
2018-07-25
もろみが熟成すると色合いを見ていよいよ搾りに掛かります。麻袋に入れて吊るしたり板で押さえる方法は現在使われておりません。ろ布とろ布の間にもろみを挟み込んで高さがあって四角い大きな筒の中にミルフィーユのように順々に積み重ねてゆきます。そうして積み重ねてゆくうちに自重で自然と液が流れ出します。重ね終わって一晩も経つと六割位の高さにまで圧縮されます。一番垂れですね。
次に、ぽたぽたしていたもろみが薄いベニヤ板のように様変わりするほど圧力をかけて押し切ることで液汁はほぼ出尽くします。
こうしてとれたもろみの液汁を数日清澄し、ろ過したものが生揚醤油と呼ばれます。また一連の過程でしょうゆ油が分離され、協業工場では麦炒りの燃料として使用しています。
ところで、もろみと聞くときゅうりと反応する方もおられることでしょうが、現在市販されているもろみとはまったくの別物です。
一麹・二櫂・三火入れ(その三)
2018-07-20
発酵タンクに送られた醤油麹はここで半年間最適な温度管理のもと、もろみとなって醸造されます。一、二か月の初期段階では、活発で旺盛な発酵によりアルコール分が発生し3%にもならんとしますし、うまみ成分も9割がた形成されてきます。ここで重要なのが撹拌と言われる作業です。木桶に棒のようなものを突っ込んで上げ下げする様子を映像として思い浮かべる方も多いと思います。この棒のことを櫂と言い、その作業を櫂入れと呼びます。もろみに刺激を与えて育成します。
三、四か月の中期段階になると色、香りが整うようになってきます。櫂入れも慈しむように対話するといった風情です。
五、六か月の後期段階は熟成期間です。過不足がないように目配り手配りします。
現在の発酵タンクでは櫂入れに代わってバブリングというエアー撹拌を行いますが、目指すところはまったく変わりません。