おぼえがき
木槽
2018-11-22
協業工場には木槽が二基据えられています。能登産の杉を使用した直径4メートル、高さ4メートルの巨大と言っていい大きさで、木桶と比べると姿が寸胴なところが特徴です。
平成26年2月に完成しました。
1ロットの諸味を仕込むためには40klくらいの容量が必要なため、せいぜい30石(5~6kl)の木桶を使っての醸造は現実的ではありませんし何より温度管理は四季まかせの天然醸造が前提になります。こうしたことを踏まえ設置したのはまさにこれからの需要への対応を考えたからにほかなりません。
先進国における有機食品の需要は日を追うごとに高まっており、伝統食品に関してはその生産設備にまで要求が及んできています。
とは言え復古主義で良いかと言えばそうではなく品温管理も含め現代化が問われます。
木槽ならジュール熱が発生するのではないか。
実験室から飛び出しての実証の始まりです。
木桶
2018-11-14
伝統的醸造食品の発酵過程において大小さまざまな木桶が活用されてきました。比較的大きなものは清酒・醤油・味噌が代表的です。ただ新桶は清酒用に新調され、ある程度の年月が経つと醤油用に、さらに味噌用にと転用されてゆきます。適材適所の再利用が推進された低負荷循環の好例と言えます。ところが戦後、木桶職人の減少、衛生観念の変化から、清酒ではホーロー容器に取って代わられるようになり、醤油の方は大量生産に適した100klを超える大容量のFRP製タンクが主流になりました。木桶の需要そのものが激減したわけです。時代の変化と言えばそれまでかもしれませんが、木桶の長所より短所に着目した結果ともいえます。とにかく洗浄に骨が折れる、乾けば暴れる、もちろん漏れる、入念な手入れを必要とします。そしてもう一つ、木桶は板取りした材料を使う関係でとんでもなく大きなものは作りづらいのです。
輸出の拡大
2018-11-13
日本の醤油が醤油だと思いがちですがアジアを中心として各国に醤油の仲間があります。そのため最近では混乱を避けるために「日本式醤油」と呼称することが増えてきています。
そしてその日本式醤油ですが原材料、製造方法の違いからこれまた一種類ではありません。
ところが欧米向けの輸出に関して言えばほぼ一種類になっていますし、それは「丸大豆醤油」を指しています。このことは何を意味しているのでしょうか。
本来の醤油は大豆と小麦と食塩だけで造るもの。非常にシンプルな理由です。欲を言えば原材料はすべて日本産であってほしいのが彼らの本音でもあります。もっとも醤油醸造の発展は市場に近いことが重要で、地産地消にこだわりはありませんでしたから、栽培も含め今後の課題と言えるでしょう。
そして究極の要望は、木桶で天然醸造してほしいとのことです。
発酵槽
2018-11-08
醤油醸造に欠かせない設備で、割と気に留められないものと言えば発酵槽でしょうか。製麹回数は貯蔵能力を超えられませんし、何といっても諸味が半年も過ごさなければならない生育の場所であるにも関わらず。
協業工場が竣工した時の発酵槽はコンクリート製開放型の水槽で40KL容量のものが48基でした。生産量の増加に伴って64基まで増設しましたが、温醸効率に難があり、120KL容量の密閉型FRPタンクに置き換えられました。こちらは二重構造のジャケット式になっており、加温・冷却の温度管理がきめ細かに出来るため現在主流の方式です。
ここに至って発酵・醸造のレベルが飛躍的に向上し、協業組合設立の所期目標のひとつが達成されたと言っていいかもしれません。
では今後はどうなってゆくのでしょうか。どうやら答えは海の向こうからやって来たようです。
有機JAS(その三)
2018-11-01
すべてのJAS認証は国が認めた多数の認証機関が実施しており、その中から選択して認証審査を実施してもらいます。協業工場が最初に依頼したのはO社という機関でした。
当時の工場長が自力で作成した申請書類を提出して臨んだところ、S審査員から種菌は有機ですかとの指摘を受けました。予想もしていなかった質問に「大野醤油」であることを損なうと抗弁したものの、最終的には有機品を買い入れるということに決着、2014年に認証工場となり、初めての仕込みをこれも初めての木桶で行うことが叶いました。
その後EU向けオーガニック醤油には別の認証が必要となりE社の審査を受けたのですが種菌は加工助剤なので有機でなくとも良いということが判明、また海洋深層水の取扱いは不可とのO社見解に対し、こちらから農林水産省に要望したところ可になったこと等から現在O社からE社へ機関を変更しています。